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2026年1月27日火曜日

精神疾患と栄養素の関係――「食事は治療の代わり」ではなく「治療を支える土台」

 


精神疾患と栄養素の関係――「食事は治療の代わり」ではなく「治療を支える土台」

うつ病、不安症、双極性障害、統合失調症などの精神疾患(精神的な不調を含む)は、心理・社会的要因、睡眠、運動、ストレス、体の病気、薬の影響など、複数の要因が重なって起こります。その中で**栄養(食事)は、症状を左右し得る“土台”**です。
ただし重要なのは、食事だけで治ると断定できるケースは限られ、医療(薬物療法・精神療法など)を置き換えるものではないという点です。食事は「補助線」として、体調と回復力を底上げする位置づけが現実的です。


なぜ栄養が“こころ”に関係するのか

脳は、体重の割合に比べて多くのエネルギーと栄養を使います。栄養状態は、たとえば次の仕組みに影響します。

  • 神経伝達物質の材料・合成(セロトニン、ドーパミンなど)

  • 脳の細胞膜の性質(脂質の質)

  • 炎症・酸化ストレス(慢性炎症は気分や疲労感と関連し得ます)

  • 腸内環境(腸―脳相関)(腸内細菌、短鎖脂肪酸、免疫・炎症など)

このため、栄養が不足したり偏ったりすると、気分・意欲・睡眠・集中力に影響が出ることがあります。


研究で比較的はっきりしていること:食事の「質」は無視できない

1) 食事内容の改善が、うつ症状の軽減に寄与する可能性

代表的な研究として、うつ病治療の補助として食事改善を行ったランダム化比較試験(SMILES試験)では、食事介入(栄養指導を含む)が対照群より抑うつ症状の改善に結びついたことが報告されています。
また、食事介入全体をまとめたレビューでも、食事改善が抑うつ・不安症状に有益となり得ることが示唆されています(ただし研究の質・ばらつきは残ります)。

2) 超加工食品(UPF)とメンタル不調は「関連」が繰り返し示されている

超加工食品の摂取が多いほど、不安・抑うつなど“共通精神症状”のリスクが高いという関連が、観察研究の統合解析で報告されています。
ただし、ここは大切な注意点があり、観察研究は「因果関係」を確定しません(不調があるから食事が乱れる、という逆方向も起こり得ます)。それでも、栄養密度が低くなりやすい食習慣が長期化すると、心身の回復力を下げる可能性は十分に考えられます。


注目される栄養素:期待できる点と、過度に期待できない点

以下は「効く/効かない」を単純化せず、現時点の知見を踏まえて整理します。

オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)

魚由来のオメガ3は、抑うつ症状に対して小~中等度の改善効果が示されたメタ解析があります。特にEPA比率など条件で効果が変わる可能性も論じられています。
一方で、効果は「万能」ではなく、個人差も大きい領域です。サプリを使う場合は、抗凝固薬など服薬状況によっては注意が必要です(必ず主治医・薬剤師へ確認してください)。

ビタミンD

ビタミンD補充が抑うつ症状スコアをわずかに改善したとするメタ解析が報告されています。
ただし、対象集団や用量、ベースラインの栄養状態で結果が揺れます。不足が疑われる場合に、検査とセットで考えるのが堅実です。

葉酸(ビタミンB9)・ビタミンB12

血中の葉酸・B12が低いことと抑うつの関連を示すメタ解析はあります。
一方で、サプリによる介入試験をまとめると、短期間で抑うつ症状をはっきり下げる効果は限定的という結果もあります(特定の集団では長期的に有益な可能性が示唆されています)。
要点は、「不足の是正」は重要だが、「誰にでも大量投与で効く」とは言いにくいということです。

マグネシウム

抑うつに対するマグネシウム補充の研究は増えていますが、メタ解析では結果が一貫しない点も指摘されています。
不安・ストレスに関しても、可能性はあるもののエビデンスの質には幅があります。
下痢などの副作用が出やすい製品もあるため、自己判断の高用量は避けてください。

亜鉛

亜鉛補充(抗うつ薬との併用を含む)のメタ解析では、効果がはっきりしない/研究規模が小さいなど課題が残ります。
不足の是正は意味がありますが、「まず亜鉛サプリ」という短絡はおすすめしません。

鉄(貧血・鉄欠乏)

貧血と抑うつの関連を示す系統的レビュー・メタ解析があり、鉄欠乏がある場合は、倦怠感や集中力低下などを介して気分にも影響し得ます。
鉄は過剰摂取も問題になるため、自己判断での長期サプリより、検査(フェリチン等)を踏まえた対応が安全です。


腸―脳相関:プロバイオティクス(乳酸菌等)は「可能性がある」

臨床サンプルを対象にした系統的レビュー・メタ解析では、プロバイオティクスが抑うつ症状を低下させ、不安症状も中等度に改善した可能性が報告されています。
ただし菌種・用量・期間が研究ごとに異なり、最適解はまだ固まり切っていません。まずは発酵食品や食物繊維など、食事全体の改善とセットで考えるのが現実的です。


実践編:精神的な不調があるときの「食事の整え方」

1) 最優先は「欠乏と乱れ」を減らすこと

  • 極端な欠食、夜だけドカ食い、糖質中心でタンパク質が少ない、加工食品比率が高い
    こうした状態が続くと、体調の土台が崩れ、症状の波が大きくなりやすくなります。

2) まず狙う食事パターン(シンプルで再現性の高い形)

  • 主食:米・全粒穀物など「エネルギー源」を適量

  • 主菜:魚・肉・卵・大豆製品でタンパク質

  • 副菜:野菜・きのこ・海藻(食物繊維・微量栄養素)

  • 脂質:魚、ナッツ、オリーブオイルなど“質”を意識

  • 間食・飲料:砂糖や超加工食品を「減らす」方向へ(ゼロでなくて構いません)

3) 「食べられない日」の現実的プラン

不調が強い日は完璧を目指さず、次の優先順位が実用的です。

  1. 水分(脱水を避ける)

  2. 少量でもタンパク質(牛乳・豆乳・ヨーグルト・卵・豆腐など)

  3. 果物やスープでビタミン・ミネラルを補助

  4. 余裕が戻ったら“食事の質”を整える


サプリメントの注意点(特に服薬中の方へ)

サプリは「不足の是正」には役立ち得ますが、薬との相互作用や、過剰摂取リスクがあります。治療中の方は、自己判断で増やさず医療者に確認してください。

  • 例:リチウム服用中は、急な減塩や脱水が血中濃度に影響し得るため、食事・水分の急変は避けるべきとされています。


まとめ:栄養でできることは「確かな土台づくり」

  • 食事の質の改善は、抑うつを中心に症状を和らげる補助になり得ます。

  • 超加工食品の多い食生活は、メンタル不調と関連が繰り返し報告されています(因果は別途検討が必要)。

  • 栄養素は「効くもの探し」より、不足の是正と食事全体の改善が本筋です。


※本記事は一般的な情報提供であり、診断・治療の代替ではありません。症状が強い、日常生活が回らない、希死念慮がある等の場合は、医療機関や公的窓口へ早めにご相談ください。

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