どうして「小説家を目指す人」が減ってきたのか?──実は“減った”より“変わった”話
「昔は、クラスに一人は“作家になりたい”って言う人がいた気がするのに、最近はあまり聞かない」
そんな感覚、ありませんか。
ただ、結論から言うと、小説家を目指す人が“消えた”というより、「目指し方の定義」と「勝ち方」が大きく変わったのが実態です。
その変化が、「志望者が減った」ように見せています。
この記事では、その理由を“構造”として整理し、最後に「いま目指すなら現実的にどう動くか」までまとめます。
1. 「専業で食べる」の難度が上がり、夢の形が変わった
以前は「出版社デビュー → 紙の本が売れる → 印税で生活」というイメージが、作家志望の王道でした。
ところが今は、出版市場が紙中心から電子・Webへ移り、売れ方も分散しています。
結果として、“小説だけで生活する”という像が現実的に見えにくくなった。
この時点で、進路としての優先順位が下がりやすいのです。
ポイントはここです。
小説の価値が下がったのではなく、収益の成立構造が変わった。
それが「目指す人が減った」という印象を作ります。
2. 入口が広がりすぎて「上位に抜ける体感」が苦しくなった
投稿サイトや公募企画の増加で、参入のハードルは下がりました。
スマホ一つで連載でき、読者の反応もすぐ返ってきます。
しかし、その一方で、作品数は膨大です。読者の時間は有限です。
つまり、今の競争はこうなります。
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書ける人は増えた(=入口は広い)
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でも読まれる枠は増えない(=上位枠は狭い)
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だから「努力しても上に行けない」体感が出やすい
この“体感”が、周囲へも伝播します。
「目指しても厳しそう」「時間に見合わないかも」と判断する人が増えるのは自然です。
3. 新人賞ルートの魅力が相対的に下がり、“志望者減”に見える
新人賞は今も強いルートですが、以前ほど「唯一の正解」ではありません。
投稿サイトで読者を集めて書籍化、コミカライズ、映像化へ、という成功ルートも普通になりました。
その結果、
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「新人賞に応募する人」が減る
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それが「小説家志望が減った」と観測されやすい
というズレが起きます。
実際には、応募者が減った=書き手が消えた、ではなく、ルートが分散した可能性が高いのです。
4. 物語を作る“代替の舞台”が増えた(動画・SNS・ゲーム・漫画原作)
今は「物語を作る」表現媒体が多すぎる時代です。
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ショート動画(反応が早い)
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SNS(拡散が起きる)
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ゲーム(物語+体験で強い)
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漫画原作(到達範囲が広い)
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シナリオ(仕事化しやすいこともある)
小説は「じっくり読ませる」強さがある一方、読者の時間を長く取る媒体でもあります。
「同じ物語づくりなら、反応が早い場所へ行く」という判断が増えるのも必然です。
5. 生成AIの普及で「文章の希少性」が揺れ、心理的ハードルが変わった
生成AIによって、文章は短時間で作れてしまう時代になりました。
すると志望者側には、次のような心理が生まれます。
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「人間が書く意味は何だろう?」
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「作品価値が下がるのでは?」
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「差別化が難しくなるのでは?」
もちろん、AIは“執筆支援”としてプラスにもなります。
しかし初期段階では、多くの人がまず不安を抱くため、目指す動機が弱まる方向に働くことがあります。
結論:減ったのは「志望」ではなく「小説家の定義」と「勝ち筋」
ここまでの話をまとめると、
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小説家として“食べる構造”が変わった
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競争の入口が広がり、上位へ抜ける体感が厳しくなった
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新人賞一本槍ではなく、ルートが分散した
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物語の舞台が小説以外にも増えた
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AI普及で価値の置き方が変わり、心理面に揺れが出た
これらが重なり、「小説家を目指す人が減った」と見えやすくなったという整理になります。
いま目指すなら:現実的な戦略はこの3択+掛け合わせ
最後に、いまの時代に合わせた“勝ち筋”を置いておきます。
A)新人賞ルート(編集伴走・看板が強い)
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強み:編集が付く、ブランドが乗る
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注意:当たるまで時間がかかる/落選耐性が必要
B)投稿サイトルート(読者獲得が最優先)
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強み:反応が早い、読者が資産になる
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注意:更新継続と導線設計が勝負
C)自力出版ルート(電子・同人・サブスク等)
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強み:スピードと自由度、長期で積み上げやすい
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注意:制作・販売・宣伝を自分で回す必要
そして最も強いのは、この3つを掛け合わせる設計です。
「投稿で読者を作る → 電子で試す → 反応の良い企画を新人賞にも投げる」など、動き方は柔軟にできます。

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